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COLUMN

美術と音楽 空間と時間

PETER & THE WOLF (Wolf) B1 Poster PETER & THE WOLF (Peter) B1 Poster PETER & THE WOLF (Wolf) B1 Poster PETER & THE WOLF (Peter) B1 Poster

昔、中学の音楽の先生が言ったことが印象に残っている。
「絵画は一瞬で作品全体を捉えることができるけれど、音楽は時間の中で表現される芸術だから一瞬では全体を捉えることはできない。」
確かに、絵画や彫刻作品もじっくり鑑賞するとそれなりに時間がかかるけれど、全体の印象は一見した瞬間に捉えることができる。音楽の場合、一瞬聴いただけでは全体は全く想像できない。
美術も音楽も大好きだった私は、美術と音楽を一体のように感じていたので、そのような分類の仕方は新鮮だった。そうか、音楽は時間と共にあるのか、と。聴覚による芸術は時間と共にあるのだ。
では美術は何と共にあるのだろう?
空間と共に。
美術作品は、何らかの形で物質なのだ。たとえデジタル画像の作品でも、何らかの形で空間に存在している状態でないと(何かしらのデバイスに表示されないと)、視覚で認知できないから。

音楽と美術。私にとってはなくてはならない芸術分野の中の2つ。
存在している「場所」はちがうけれど、密接に呼応しあっている。
音楽を聴くと視覚イメージが立ち上がり、視覚イメージからは音楽が聴こえる(気がする)。
人間は音楽の中に見えるはずのない視覚イメージを持ち、絵の中に聞こえるはずのない音楽を聴く。
美術と音楽はどこか見えない場所で繋がっている。
つまり空間と時間も切り離せない概念だということ。

私の美術大学の卒業制作は、プロコフィエフの交響詩物語『ピーターと狼』のポスターだった。
ピーターと狼の登場人物全部をそれぞれ1枚のポスターにした。
今も昔も、「音楽」を2次元に表現することにとても惹かれる。

2020年5月1日
文 : 佐武 絵里子

図1 PETER & THE WOLF "Bird" B1 Poster ©1989 Eriko Satake 東京藝術大学美術館

図2 PETER & THE WOLF "Cat" B1 Poster ©1989 Eriko Satake 東京藝術大学美術館